金管楽器を吹く上で、唇が薄くてイイとか、厚いから不利だとかいう話題になることがある。
クチビルの厚さというと赤く見える部分の高さのことを普通指すのではないかと思うが、歯科で唇の厚さというと口唇(口腔前庭の前面:赤いところだけでなく前歯を被っているビロっとなる部分)の前後の厚みをいうのだけど、ここでは赤く見える部分の高さについて書くことにします。ここは赤唇部といって皮膚と口の中の粘膜との移行部分で、組織学的にも中間的な性格で、乾いていて縦にスジが入っているので見ればわかると思います。
生まれもっての赤唇の厚さというものもあり、人種や家族的なことでもちろん人によって色々であります。が、それよりも、後天的な要素でクチビルの厚さは変わると思うのです。
例えば、クチビルが厚いな〜〜という印象の人というのは、実は赤唇部自体が厚いというより、内側の粘膜が表に出ていることが多いんじゃないかと。歯が前に出ていたり、口唇が短かったり、いつも口唇を開いているような人は、どうしてもめくれて粘膜寄りの部分が表に出てしまう。また、出っ歯(上下の前歯の前後的な位置の差が大きい)だと下唇が上の前歯で翻って厚く見える。
逆に、金管楽器のプロ奏者には普通以上にクチビルが薄い人がいるように感じるのだが、私が思うに、成長期以前に金管楽器を始めることで口唇が発達して長くなって、結果赤唇部が内側に入り込んで薄く見えるんではないかと想像しているのです。
だから、クチビルが厚いと金管楽器(この場合はリムの小さいトランペット、ホルン限定ですな)に向かないとか、薄いと上手いというのは、クチビルの厚さ自体が楽器の上手下手を決まるんじゃなくて、厚い人の中には歯が出ていたり口唇の力が弱い人が多いので、そういう人は金管を吹くのに不利、上手い人には口唇が発達してクチビルが薄くなる人がいるといった話なんじゃないかと思うのであります。
だからあんまり見た目のクチビルの厚さで楽器の向き不向きを言わない方がいいのでは・・・というお話でした。元々の赤唇の厚いのが直接は下手の原因にはならないんじゃないかな(合うマウスピースは違うとは思うけど)。例えば黒人は皆厚いけど、トランペットやホルンの名人はいるのです。
歯の出具合でクチビルの厚さが変わる証拠として一つ写真を載せます。出っ歯だった金管楽器を吹いている人が矯正治療で前歯を7mm後ろに下げたのですが、クチビルがこんなに薄くなりました。
